夜のミッキー・マウス(谷川俊太郎)を読んだ
図書館で借りて読んだ。
大人が書いた詩集をちゃんと読むのはもしかしたら初めてかもしれない。子供たちが読売新聞に投稿した詩のアンソロジーは昔読んだ。こっちはその詩を選んだ大人のコメントも含め、子供の目線や気取らない言葉選びが面白く、その分心を強く動かされて大体涙か笑いをこらえながら読んでいた。おすすめです。
谷川俊太郎は「春に」で知った。もともとあった谷川俊太郎の詩に木下牧子が曲をつけた合唱曲で、中学校の合唱祭で上級生が歌ってるのを聴いた時から好きだった。残念ながらこの曲を歌って発表することは出来なかったけど、何度も聴いたし、大人になった今もたまに聴いて良いなぁとしみじみ思う。やっぱり良い歌詞には良い曲がつくんだなと(その逆も然り)。
思春期の感情がうまく表現されていて、そうでありながら大人目線から何かを押し付けるようなことは一切ない。聴いたことない人は聴いてほしい。
そんな谷川俊太郎の夜のミッキー・マウスは、ジムで知り合った1つ上の男の子からおすすめされた本。これが名前も知らない作家だったら読むのを後回しにしてたけど「春に」が好きだから読んでみたくなった。
タイトルの「夜のミッキー・マウス」以外に、「朝のドナルド・ダック」「詩に吠えかかるプルートー」「百三歳になったアトム」というキャラクターシリーズがある。これはあまりピンとこなかった。この4篇が最初に収録されている。
その次の「ああ」が好きな詩だった。おそらくセックスしてる最中のどちらか片方の詩。
こんなことやめたい
あんたとビール飲んでるほうがいい
バカ話してるほうがいい
この3行に自分の意思とは裏腹にこうなってしまった誰かを想像して悲しい気持ちになった。
一番好きなのが「あのひとが来て」という、この詩集のために書き下ろされた詩。
通勤中の電車内で読んでいたけど、思わず息を飲んでしおりをそのページに挟んで何度も何度も読み返した。思えば図書館で本を受け取ったときもこのページにしおりが挟んであったような気がする……。
『あのひと』を自分の恋人に置き換えて読みだしたら泣きそうになった。いつでも読み返せるようにこの詩集を買って家に置いておきたいと強く思った。一部を引用しても良さが伝わらない気がするので引用はしない。ぜひどこかで手にとって読んでみてほしい。真ん中よりちょっと後ろの方に載ってます。
谷川俊太郎、だいぶ引いたところから世の中や人々を見つめて淡々と詩を生み出してる印象を受けた。もちろんそうじゃない詩「なんでもおまんこ」や「ママ」もあるけど数はとても少ない。そういうモードに入って書くんだろうな。
「あのひとが来て」に出会えたことがすごく良かった。音楽だとこうはいかない……アルバムで1曲だけ好きな曲があってもそのアルバムの評価は高くならない。詩集だと1つあるだけでとっても素敵な出会いをした気持ちになる。何でだろうな~。音楽に厳しすぎるのか……。